痙縮(けいしゅく)「手足のつっぱり」とは
脳卒中でよくみられる運動(機能)障害の一つに痙縮(けいしゅく)という症状があります。
痙縮とは筋肉が緊張しすぎて、手足を動かしにくかったり、勝手に動いてしまう状態のことです。
痙縮(けいしゅく)では、手指が握ったままとなり開こうとしても聞きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。
痘縮(けいしゅく)による姿勢異常が長く続くと、筋肉が固まって関節の運動が制限され(これを拘縮「こうしゅく」といいます)、日常生活に支障が生じてしまいます。
また、痙縮(けいしゅく)がリハビリテーションの障害となることもあるので、痙縮に対する治療が必要となります。
痙縮(けいしゅく)「手足のつっぱり」の治療
現在、痙縮(けいしゅく)の治療には、内服薬、ボツリヌス療法、神経ブロック療法、外科的療法、バクロフェン髄注療法などがあります。
患者さんの病態や治療目的を考慮して、リハビリテーションとこれらの治療法を組み合わせて行います。
・内服薬(飲み薬) | 緊張している筋肉をゆるめる働きのある薬を服用します。 |
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・ボツリヌス療法 | 筋肉を緊張させている神経の働きを抑える、ボツリヌストキシンという薬を注射します。 |
・神経ブロック療法 | 筋肉を緊張させている神経に、フェノールやアルコールなどを注射し、神経の伝達を遮断します。 |
・外科的療法 | 筋肉を緊張させている神経を、部分的に切断したり、神経の太さを縮小したりする手術です。 |
・バクロフェン髄注療法 | バクロフェンという痙縮(けいしゅく)をやわらげる薬の入ったポンプを、おなかに植込み、薬をせき髄周辺に直接投与します。 |
ボツリヌス療法とは
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。
ボツリヌストキシンには、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があります。そのためボツリヌストキシンを注射すると、筋肉の緊張をやわらげることができるのです。
ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。
日本では、手足(上肢・下肢)の痙縮(けいしゅく)、眼瞼(がんけん)けいれん(瞼(まぶたがけいれんする病気)、片側顔面けいれん(顔の筋肉が収縮する病気)、痙性斜頸(けいせいしゃけい)(首が斜めに曲がってしまう病気)、小児脳性まひ患者の下肢痙縮(けいしゅく)に伴う尖足(せんそく)(つま先が伸び、かかとが床につかない状態)、重度の腋窩多汗症(えきかたかんしょう)(ワキの下に多量の汗が出る病気)、斜視(両眼の視線が同じ方向に向かない状態となる病気)といった疾患に対して認可されています。
ボツリヌス療法の効果
ボツリヌス療法によって次のような効果が期待できます。
- 手足の筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなることで、日常生活動作(ADL)が行いやすくなる。
- リハビリが行いやすくなる。
- 関節が固まって動きにくくなったり、変形するのを防ぐことができる(拘縮予防〉。
- 手足のつっぱりによる痛みがやわらぐ。
- 介護の負担が軽くなる。
ボツリヌス療法のすすめかた
ボツリヌス療法の効果は、注射後2~3日目から徐々にあらわれ、通常3~4カ月間持続します。
効果は徐々に消えてしまうので、治療を続ける場合には、年に数回、注射を受けることになります。
ただし、効果の持続期間には個人差があるので、医師と症状を相談しながら、治療計画を立てていきます。
初めての治療で理想とする効果を期待するのではなく、繰り返し治療を重ねることで、最適な治療(投与量・投与部位)をみつけていきます。